< ニューイングランドへの憧れ >

ニューイングランドというエリアの認識は
ごく最近の事だが、昔から何かに付けて
気になる地域であった。

私は団塊の世代に属し、VANジャケットや、
IVYリーグファッションの洗礼を受けた一人
であります。

アイビーリーグは東部のハーバードやエール等の名門大学の呼称で、そこでの学生やそのOBの
ファッションを紹介したのが、石津謙介氏と同氏が設立したVANという今で言うアパレルの会社
で、<メンズクラブ>、<平凡パンチ>等の雑誌を媒体として社会的な現象となるほどの流行と
なった。ブルックスブラザースやジエイプレス、ポロ等でそのファッションはいまだに支持され
ている。

その、VANの<ケープコッド>ブランドがあって、そのポスターにゼノアを張ったニス塗りのクル
ーザーが大きな波の中を走っている写真が使われていた。それを見たときは実物のヨットも見た事
も無く、意識した事も無い時であったが、何故か鮮烈に記憶にある。ケープコッドの場所は世界地
図を見て確認した。

メルビルの<白鯨>という小説がある。舞台はナンタケットという、ケープコッドの南にある捕鯨
の島で、現在では隣のマーサズビンヤード島と共に夏には軽井沢状態になるという美しい歴史的な
島である。捕鯨帆船や、沿岸漁業の漁船、ロブスター漁の船、かってはそれらは帆船であった。

ヨットを知り、学生時代はディンギーに明け暮れ、社会に出ては世界の外洋レースにも出場しヨット
の建造にも関与したり、クルージングも楽しみ、いつしか年齢を重ねた今、ニューイングランドの
ヨットや、そこで行われているヨッティングや、古い艇をレストレーションしたり、木造艇がいまだに
多く新造されている事が、どうにも気になって仕方が無い。場所柄、アメリカズカップの歴史にも
深く関係している土地でもあるが、豊かな経済力を背景にし、アメリカの中で最も歴史的に古く伝統
や文化的にも豊かな地域で日常に繰り広げられているヨッティング文化は、特殊なものであるのは確
かであるが、興味深く、学ぶべきものも多い。

私が初めてこの地に足を踏み入れた最初の2度のマーブルヘッドへの訪問は、あくまで仕事をこなし
に行ったもので、自発的にもう一度行ってみようという動機は、2つの新しく開発されているという
ヨットに触発されての事であった。その2つのヨットのことは、又追々と書く事にしよう。

何故か自然に、ニューイングランドに引き入れられ、知れば知るほど興味が尽きないという気持ちに
なっている。憧れる気持ちは、昔の漠然としたものがかなり明確な形を見せてきた今でも変わらないし
むしろ具体的なものとなった今は、強くなっているのかもしれない。


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